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5月になると一気に雪解けが進み、山にも春の気配が漂うようになる。
厳しい冬を避けて季節移動していたカワラヒワやアオジの姿が目立つようになり、遠くまで響くのはシジュウカラのさえずりだ。
重い雪を跳ね除けるように笹が持ち上がるたびに、その音に熊じゃないかとハッとなる。
陽差しを感じながら歩いていると汗ばんでくるが、柔らかい風が心地よい。
文句のつけどころがないような快適な季節なはずなのに、僕には少し物足りなく感じることがある。
西日本生まれの性だろうか、どこかで、あのムッとする湿度を懐かしんでいる自分に気づく。
ないものねだりというのはこういうことなのだと自責しつつ、やはりビールを美味しく感じるためには「もう少し蒸し暑い方がええな」と、つい思ってしまうニセコの春なのである。
贅沢な話ですね。
テキスト・写真/豊嶋秀樹